それは秘密です
「といっても、まるで子犬同士がじゃれあってるみたいな感じで、全然色っぽい関係には見えなかった。本当に仲の良い同期なんだなって思った。お前とはそこそこ気心も知れてるし、協力してもらうにはうってつけの人物だと…」
「だって、俺の方はつい最近まで、まったく自分の気持ちを自覚してなかったですから」


俺はあえて軽い口調で解説した。

あくまでも勝者の余裕を見せつけておきたかったのだ。


「佐藤の思いには薄々気が付いてはいたけど、女友達であんな気軽に付き合える奴なんて今までいなかったから。その関係性を壊したくなくて、あえてしらばっくれていたんです」
「何だそれ…」
「だけどあんたに『佐藤さんとの仲を取り持ってくれないか?』って言われて、唐突に焦り出したんですよ」


その時の気持ちが甦る。


「あいつのことを狙っていた男がいたんだ。しかも社内でも超有望株の優良物件。もしかしたらあっさりと心変わりされて、俺なんか見向きもされなくなってしまうかもしれないって」


だから『横取りされてなるものか』って、思ったんだよな。


「……勝手な奴だな、お前」


加東はため息混じりに呟く。


「それまで佐藤さんの気持ちをないがしろにして来たくせに、離れてしまうかもしれないとなったら途端に惜しくなったのか」
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