それは秘密です
ビル内の一室を控え室としてお借りして、バイトさん達には交代で外に出てもらい、必ず合間合間に設けられている休息時間にしっかり水分補給して涼を取り、くれぐれも無理はせずに任務に当たって下さいとお願いしてあったのだけれど、それでもその事態を回避できなかったようだ。

その女性の異変にいち早く気付き、ビル内の救護室まで誘導したのが加東さんだった。

幸い発見が早かったので熱中症とまでは行かず、軽いのぼせ状態で留まったようだ。

とはいえもちろんそれ以上無理はさせられないので、しばらくそこで休ませた後、迎えに来たお姉さんと共に帰宅させたらしい。

これらの事情はイベントの翌日加東さんが我が部署を訪れ、課長と交わした会話から分かった事だ。

予定外で早退する事になったので慌ただしく帰り支度をしたからか、その女性は控え室にタオルを忘れてしまい、連絡先を把握している人事課から宅配便で返却するよう、加東さんは依頼をしに来たのである。

そして課長にその時のいきさつを報告したのだった。

課長とは同じグループで上座と下座ではあるけれど席はさほど離れていないし、加東さんが若干大きめな声で語っていたので内容は自然と耳に入って来た。

「配布が始まる前、控え室で一人キャピキャピとはしゃいでいたんですよ。それであまりよろしくない意味で印象に残っていたんです」
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