それは秘密です
ただの状況説明だけに留まらず、加東さんは自分の本音を課長にぶつけていた。
「『天下の天海製菓のキャンペーンに潜り込めて超嬉しい。女優のエレナちゃんも間近で見られるし。昨夜は友達に自慢の電話をかけまくったからちょっと寝不足』なんて言って。それでいざ仕事が始まってそれぞれの動きを見守っていたら、彼女の表情や声や動きがみるみるトーンダウンして行ったんです。気分が優れなくなったんだな、っていうのは手に取るように分かりました」
というかむしろ、課長にそのことを進言するのを主な目的として人事課を訪れたのかもしれない。
「ああいう風に、遊び感覚で仕事に来られると困るんですよね。楽しく愉快なキャンペーンだから勘違いしているのかもしれないけど、楽しんでいただくのはあくまでもお客様。スタッフ側がはしゃいでどうするんだ、と思います」
そう言う加東さんの表情はとても厳しいものだった。
「それで、私の立場でこのようなことを申し上げるのは僭越なのですが、またあの女性が応募して来ても採用はしないでいただきたいんです。浮かれ気分で舐めきった態度で仕事に来られて、また途中で抜けられたりしたら他のスタッフに負担がかかりますし、今回はたまたま運良く免れましたが、周りのお客様に不穏な空気を感じ取られてしまったら、せっかくの楽しいイベントが台無しになってしまいます」
「そうだな…」
「『天下の天海製菓のキャンペーンに潜り込めて超嬉しい。女優のエレナちゃんも間近で見られるし。昨夜は友達に自慢の電話をかけまくったからちょっと寝不足』なんて言って。それでいざ仕事が始まってそれぞれの動きを見守っていたら、彼女の表情や声や動きがみるみるトーンダウンして行ったんです。気分が優れなくなったんだな、っていうのは手に取るように分かりました」
というかむしろ、課長にそのことを進言するのを主な目的として人事課を訪れたのかもしれない。
「ああいう風に、遊び感覚で仕事に来られると困るんですよね。楽しく愉快なキャンペーンだから勘違いしているのかもしれないけど、楽しんでいただくのはあくまでもお客様。スタッフ側がはしゃいでどうするんだ、と思います」
そう言う加東さんの表情はとても厳しいものだった。
「それで、私の立場でこのようなことを申し上げるのは僭越なのですが、またあの女性が応募して来ても採用はしないでいただきたいんです。浮かれ気分で舐めきった態度で仕事に来られて、また途中で抜けられたりしたら他のスタッフに負担がかかりますし、今回はたまたま運良く免れましたが、周りのお客様に不穏な空気を感じ取られてしまったら、せっかくの楽しいイベントが台無しになってしまいます」
「そうだな…」