らいす
「ごめんくださーい。誰かいませんか?」
近づいてみると、まさしくそれは山小屋だった。おとぎ話に出てくるような、中から小人がでてきそうな感じだ。
けれど、中からでてきたのは小人でもお姫様でもなかった。
「はい」
それは、私と同じ年くらいの男の子だった。
やっと人とめぐり会えた喜びで、言葉を失う私を、彼は怪訝そうにみつめた。
「えっと……?」
「はっ⁉ごめんなさい。道に迷ってしま
って帰り道がわからないんですっ」
私は、あわてて彼に事情を説明した。
「あー、そうだったんですか。僕でよければ道案内しますよ」
「ありがとうございます。助かります」
快く引き受けてくれた彼に、私は安堵した。これで、ようやく帰れる…。
「あの、お名前を聞いても?」
私は、日本人にしては背が高く整った顔つきをしている彼を見上げて尋ねた。
「そういうときは、自分から名乗るものですよ」
「あっ、ごめんなさい。私は、米沢はるひといいます」
「僕は、ケインズ=ファインと申します。よろしく、はるひさん」
「よ、よろしくお願いしますっ」
笑顔で握手を求めてくるケインズさんに戸惑いながらも私はしっかりと握手を交わした。
ハーフなのかな?と思いつつ、聞けずにいると…
「で、家はどのへん?」
ケインズさんが尋ねてくれた。
「えと、わかりません…」
申し訳ないと思いつつ、私は正直に答えた。
「えーと、、、どこから歩いてきたの?」
「気がついたら、知らない場所に倒れていて…そこから歩いてきました」
「え!?それ、どーいうこと?」
「わ、わかりません…」
困り顔のケインズさん。
「ごめんなさい…」
「謝らなくていいよ。とりあえず、入りなよ」
立ち尽くす私をみかねて、ケインズさんは山小屋(自宅?)に招き入れてくれた。
外見は山小屋のようだったけれど、意外と中は広く家具や小物がすっきりと整頓されていて、不思議と落ちつく室内だった。
「何か、珍しい?」
物珍しそうに室内をみていた私は、はっとした。
「ごめんなさい。なんだか、自分の家にいるより落ちつくなぁと思って…」
「そう?ま、座りなよ。お茶、淹れるから」
「ごめんなさい」
「…あのさ、さっきから思ってたんだけどはるひさんってよく謝るよね」
「ご、ごめんなさい」
「ほら」
「あっ」
恥ずかしくなってうつむく私に、ケインズさんは笑って言った。
「謝ることは悪いことじゃないけど、何でもかんでも謝ってすまそうとするのは相手に失礼だよ。自己満足だ」
優しい口調のわりには、厳しいことをいうケインズさん。
「ご、ごめ…、えっと…」
「ごめんのかわりにありがとうって言ったらいいんじゃないかな」
「ありがとう」
どういたしまして、と言ってケインズさんは微笑んだ。その日だまりのような笑顔に私は少しほっとした。
「あの、ケインズさん」
「ケイでいいよ」
「ケイさん、私かわいいお家がならぶ村のほうから来たんですけど、あっちには人が住んでいないんですか?」
「あー…、あっちには行かないほうがいいよ」
なぜか苦い顔をしてケイさんは言った。
「どうしてですか?」
「もう行っちゃったようだから教えるけど…、あの村はデス・ドリームストリート
と呼ばれてる」
「死の夢?」
「そう。要するに死者のまちだ」
死者のまち?
その言葉をきいてゾクッと背中に悪寒が走った。
「えと、それはつまり…?」
「あの村には、夢に破れた死者が大勢住んでいる」
近づいてみると、まさしくそれは山小屋だった。おとぎ話に出てくるような、中から小人がでてきそうな感じだ。
けれど、中からでてきたのは小人でもお姫様でもなかった。
「はい」
それは、私と同じ年くらいの男の子だった。
やっと人とめぐり会えた喜びで、言葉を失う私を、彼は怪訝そうにみつめた。
「えっと……?」
「はっ⁉ごめんなさい。道に迷ってしま
って帰り道がわからないんですっ」
私は、あわてて彼に事情を説明した。
「あー、そうだったんですか。僕でよければ道案内しますよ」
「ありがとうございます。助かります」
快く引き受けてくれた彼に、私は安堵した。これで、ようやく帰れる…。
「あの、お名前を聞いても?」
私は、日本人にしては背が高く整った顔つきをしている彼を見上げて尋ねた。
「そういうときは、自分から名乗るものですよ」
「あっ、ごめんなさい。私は、米沢はるひといいます」
「僕は、ケインズ=ファインと申します。よろしく、はるひさん」
「よ、よろしくお願いしますっ」
笑顔で握手を求めてくるケインズさんに戸惑いながらも私はしっかりと握手を交わした。
ハーフなのかな?と思いつつ、聞けずにいると…
「で、家はどのへん?」
ケインズさんが尋ねてくれた。
「えと、わかりません…」
申し訳ないと思いつつ、私は正直に答えた。
「えーと、、、どこから歩いてきたの?」
「気がついたら、知らない場所に倒れていて…そこから歩いてきました」
「え!?それ、どーいうこと?」
「わ、わかりません…」
困り顔のケインズさん。
「ごめんなさい…」
「謝らなくていいよ。とりあえず、入りなよ」
立ち尽くす私をみかねて、ケインズさんは山小屋(自宅?)に招き入れてくれた。
外見は山小屋のようだったけれど、意外と中は広く家具や小物がすっきりと整頓されていて、不思議と落ちつく室内だった。
「何か、珍しい?」
物珍しそうに室内をみていた私は、はっとした。
「ごめんなさい。なんだか、自分の家にいるより落ちつくなぁと思って…」
「そう?ま、座りなよ。お茶、淹れるから」
「ごめんなさい」
「…あのさ、さっきから思ってたんだけどはるひさんってよく謝るよね」
「ご、ごめんなさい」
「ほら」
「あっ」
恥ずかしくなってうつむく私に、ケインズさんは笑って言った。
「謝ることは悪いことじゃないけど、何でもかんでも謝ってすまそうとするのは相手に失礼だよ。自己満足だ」
優しい口調のわりには、厳しいことをいうケインズさん。
「ご、ごめ…、えっと…」
「ごめんのかわりにありがとうって言ったらいいんじゃないかな」
「ありがとう」
どういたしまして、と言ってケインズさんは微笑んだ。その日だまりのような笑顔に私は少しほっとした。
「あの、ケインズさん」
「ケイでいいよ」
「ケイさん、私かわいいお家がならぶ村のほうから来たんですけど、あっちには人が住んでいないんですか?」
「あー…、あっちには行かないほうがいいよ」
なぜか苦い顔をしてケイさんは言った。
「どうしてですか?」
「もう行っちゃったようだから教えるけど…、あの村はデス・ドリームストリート
と呼ばれてる」
「死の夢?」
「そう。要するに死者のまちだ」
死者のまち?
その言葉をきいてゾクッと背中に悪寒が走った。
「えと、それはつまり…?」
「あの村には、夢に破れた死者が大勢住んでいる」