階層より
「 私」が物心ついて、小学校に入る前のこと兄弟、母とお風呂に浸かり話をしていました。内容は「死んだらどうなるの?」という疑問から始まったのを覚えている。親はなんと答えるのが正解か自身に問いかけ、笑顔で「お空にある天国にいくのよ」と子供に教える。次いで「悪いことをすると地獄に行くよ」と少し凄んで言うかもしれない。それとも前世から後生へと続く蘇りの連鎖について動物を交えて語るのかもしれない。
けれど、母の話はそのどれとも異なっていた。
「死んだらどうなるの?」
「人が死ぬと魂は体から離れてね、その魂は生きていた時の行いによって行く場所が違うの」
「タンス入れを想像してみて、7つの引出しがあってね一番上の引き出しには生きている間に良いことをした人が入る場所」
「上から二番目の引き出しには良いこともしたけど悪いこともした人が入る場所」
「どうやって決めてるの?」
「神様が魂を見て入れる引き出しを決めているんだよ」
「 下の引き出しは悪い人が入ってるの?」
「そう。生きている間に人を殺した人は一番下の引出しに入るんだよ」
「引き出しはね一番上が一番楽しくて幸せ一番下の引き出しは苦しみや悲しみしかない所なんだよ」
「もしお母さんが死んで、僕が死んだら一緒の所入れるかな?」
「それは分からない神様が決めるからね」

この時、涙が出そうになり堪えた。初めて死への恐れを感じた。
「お化けっているでしょ?」
「うん」
「人を殺した人は苦しみや悲しみしかない所へ行くんだけど、嫌だからお化けになって生きている人に助けを求めるの」
「お化けは怖がる人に来るからね怖がらなければ大丈夫だよ」
「お化けなんか怖くないよ」
「魂の入るタンスにはね入ることの出来ない魂があるの。」
「この世の中には人を殺すことよりも悪いことがあるんだよ。それはね自殺する事、だってね親より早く死ぬことほど親不孝なものはないんだから」
「僕は自殺しないから大丈夫だよ」

話を聞いた日胸がいっぱいでなかなか寝られなかった。 魂の話を聞いたのは母の口から一度きりであった。
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