教室と、初恋。
仕方なく人ごみに入って行って、列が進むのを待つ。
確か少し回ったところにエレベーターもあったよな、そっちのが早かったかな……。
なんて考えていると。
「すみません、失礼します……」
小さな、女の人の声が聞こえてきた。
人ごみの少し前のほうが一瞬空いて、その代わりに……車いすに乗った女性が現れる。
……もしかして、彼女がこの混雑の原因?
階段があることを知らなかったのかも。
暑さを感じないのか、長く綺麗な髪を結うことなくなびかせた彼女は、十分すぎるほどに周りの人に頭を下げながら入り口から遠ざかってきた。