教室と、初恋。


多少無理をしてしまったかもしれないけれど、慎重に慎重に行くよりはかける迷惑も少ないだろうと思って。


もちろん、お姉さんには負担をかけないよう最低限の注意はしたけれど。




そしてわたしはお姉さんを人ごみから外れたところに連れてきた。



「大丈夫ですか? 無理してしまってごめんなさい……」


「いいえ、ありがとう親切にしてくれて。助かった」



頭を下げたわたしに対し、柔らかく微笑んでくれるお姉さん。


綺麗な顔とその笑顔に、ふわっとお花に包まれたような幸福感を覚える。



「あの……少し回ったところにエレベーターがあります。よかったらそちらまでご案内しましょうか?」



綺麗でか弱そうなお姉さんを放っておけなくて。


出しゃばっちゃったかな、と思ったけれど、気がついた時にはそう言っていた。




< 56 / 94 >

この作品をシェア

pagetop