教室と、初恋。



「貴方、ありがとうね。私はどこかこの辺りで見てるから、幼なじみくんの応援に行ってあげて?」


「大丈夫ですか……?」



この会場はスタンド席で、危ないんじゃないかと思ったけれど、一番上の階に当たるこの辺りは平らで、確かにここが一番安全だと気付いた。



「じゃあ……失礼しますね。帰りも危ないのでエレベーター使ってくださいね!」



余計なお世話かもしれなかったけれど、そう言ってお姉さんとわかれた。


本当に、話してるだけでほんわかするいい人だった。


いい香りもしたし、髪や肌も綺麗だし……あれが大人の女性なのかな。



そう思いながらコートのほうへ降りて行く。


「やさしい子……まるで隼人みたい」


そんなお姉さんのつぶやきは聞こえなかった。


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