教室と、初恋。
階段を下りていくと、一番わたしに近いコートで試合をしているのがわたしの高校のテニス部のユニフォームだということに気づいた。
もしかして、と思って階段を下りていき近づいて見ると、やっぱりそれは健人だった。
前持たせてもらったときにとても重く感じたラケットを風を切る勢いで振り、ボールを打ち返す。
それは相手に取られることなく、コートの上に落ちていった。
「……かっこいいじゃん」
思わず出た言葉。
つい、観客席とコートを区切るフェンスに手をかけて見てしまう。
汗をユニフォームの裾で拭って、腹筋が覗く。
いつの間にか完全にわたしとは違う体つきになっていたことに気がついて、ついどきっとした。
わたしの中の記憶は、一緒にお風呂に入ってた頃のままだったのになぁ……。