教室と、初恋。
その健人の敗戦から、なんとなく観客席から動けずにいるわたし。
気がつけば試合もとっくに終わって、観客もまばらだった。
ここにいてもなんだし……そろそろ帰らなくちゃ、と思ったそのとき。
コートに先生と健人が戻ってくるのが見えた。
健人の手、そしてなぜか先生の手にも握られたラケット。
観客席から少し離れたコートまで2人はまっすぐ歩く。
先生が健人に何か話しかける。
健人も先生に応えるように頷いた。
とてもこんなところからじゃ聞こえない……。
先生が健人の頭に軽く手を置いたかと思うと、そのまますれ違って、健人と対峙した。