教室と、初恋。
健人が少し笑ってサーブをする。
さっきまでとは違う、ゆっくりしたラリー。
その間も会話は続いてるみたいで、2人もさっきより声を張っているせいか、少し聞こえるようになった。
「……じゃあ、なんで負けたと思う」
「俺の……練習不足」
静かなコートに、ボールを打ち返す音が響く。
「違う」
先生が小さく言うと同時に、ラケットが風を切る音も聞こえてきた。
鋭い角度で入った先生の打ったボールが、健人の横に転がる。
「俺なんかのボール落としてんじゃねーよ」