教室と、初恋。
怒鳴りはしないけど、いつもよりよくとおる声。
健人はため息をつきながら髪をかき上げ、ゆっくり座りこんだ。
「……約束通り、二か月の部停だから。ラケットもつの禁止」
「え……っ」
つい出てしまった声。
部停? 健人が……?
そんなわたしとは対照に、少し微笑んで頷く健人。
先生に手を差し出され、そこに静かにラケットを渡す。
先生は片手で2本ラケットを持ち、健人の横にしゃがんで健人の肩に手をまわした。
そして健人を半分無理やり立ち上がらせて、そのまままたぽんと頭を軽く叩く。
その間の会話はわたしには聞こえなかったけれど、歩きだしていく2人はなんだか本当に……友達みたいに見えて。
その分余計、深刻なトーンで告げられた部活動停止の命令が不思議に思えた。
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