~赤い月が陰る頃~吸血鬼×妖狐執事
白崎零の秘密
ザァーー
私は俯き、シャワーに打たれながら立ち尽くす。
頬につぅ、と水が滴り落ちる。
すっと顔を上げて鏡に映った自分を見つめる。
(……こんな時でも、泣くことすらできなくなったのか)
見つめ返してくる鏡の中の自分は、何一つ感情を抱かない人形のような顔つきをしていた。
シャワーを止めて、湯船の方に向かう。
いつの頃からか、抱いた感情を表に出すことが
出来なくなっていた。
(「今も真っ赤になられていますよ?」
「……お、お前!」)
────私は一体どんな顔をしていたんだろうか……
不自然な鼓動を繰り返しはじめる胸をぎゅっと抑えて、お湯にぶくぶくと沈んでいった。
お風呂から上がり、
衣服を身に付けて脱衣所を後にしようと、扉を開く。
一歩踏み出すと、扉の右端に零が待機していた。
「お湯加減いかがでしたでしょうか?」
「……あぁ、問題ない」
「そうですか。では、お食事はどうなさいますか」
「……今日は要らない」
「承知致しました」
私は自室へ向かって再び歩き出す。
零は、私がいなくなると、その場を後にした。