~赤い月が陰る頃~吸血鬼×妖狐執事




こんこん




「凜様、いらっしゃいますか?」





しばらくすると扉が開き、寝巻きを身につけたお嬢様が顔を出す。




「……なんだ」




「何も食べてらっしゃらないので、せめてこちらをと思いまして。」





「……ん、入れ」




しばらく黙った後、お嬢様はそう言ってドアを大きく開けた。




「あぁ、いえ、私は外で構いません」





「……いいから入れと言っている」




私はその申し出に驚きつつも、手を引かれて部屋の中に入っていった。





凜様個人のお部屋は、基本無干渉だ。


だが、とても整理整頓されていて、そもそも物があまりない。



普通の女子高校生であればもっと華やかな部屋なのだろうと思う。




お嬢様は部屋に入るとベッドに腰掛けて、
ココアを飲む。




私はローテーブルの横で正座をして待機していた。





「お口に合いましたでしょうか」





「……あぁ」




「そうですか、良かった。」


私はそう言ってお嬢様に微笑む。

お嬢様は私と目がかち合うとすぐに目を逸らした。



(……?私、何かしてしまったのだろうか?)



零がそう考えていると、



「……あの、零」



遠慮がちに名前を呼ばれる。




「はい、何でしょう」




「お前は、確か自分は妖狐だと言ったな」





「その通りでございます」





そう、私の血筋は妖狐だ。そして私の一族は代々、九条家の使用人として仕えてきた。



私もまた、
その道を外すことなく主に仕えている。




「妖狐とはどんな姿をしているのだ」




「そうですね……ご覧になりますか?」




「なっ、ここでか?」





「大丈夫ですよ。」




そう言って私は目を閉じて印を結ぶ。



二本指で横一線に空を斬ると、足元から風が吹き始める。



しばらくして風が吹き止むと、体がすっと軽くなった感じがした。














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