~赤い月が陰る頃~吸血鬼×妖狐執事
〜凜side〜
目の前に広がる光景に流石に驚きを隠せない。
白くてぴんと立った耳。
大きくてふわふわした尻尾。
そして真っ黒だった髪は銀色掛かった白へと変わっていった。
そして風が完全に止むと、零がゆっくりと目を開く。
その目は透き通った水色で、猫目のような獣の目をしていた。
「……ね、大丈夫でしょう?」
こんなに間近で獣を見たのは久しぶりだった。
生き物は昔から大好きだったが、いつの頃か獣と触れ合うことはなくなっていた。
「……綺麗」
「……そ、それは有り難うございます」
零が少し戸惑う。
私はそれに構うことなく勢い良く零に近づいて
自分の中に生まれた衝動に任せ、
零の尻尾を遠慮なく触れた。
「……わっ、あっ、ちょ、ちょっと!」
零はいつにもなく慌てふためく。
が、私はそれも気にせずに真っ白でふわふわした尻尾に顔を擦り付ける。
「……もふ、もふ」
ふわふわしてて、温かい。
妖狐は、皆こうなのだろうか?
零の御両親もきっと同じような容姿なのだろう……
と、私は心底どうでもいい事を考えていた。
そうしている間にも零の衝動は加速していく───