~赤い月が陰る頃~吸血鬼×妖狐執事
「………り………」
誰だ?
「…………りん……」
どこかで聞き覚えのある声だな……
私を呼んでいるのか……?
「 凛様っ……」
(…………!!)
「……っ! はぁ、はぁ……」
視界が明瞭になると、そこは私の部屋だった。
……どうやら、
私は自室のベッドで横になっているようだ。
(とすると、私は気を失って……
あれは夢だったのか……?)
痺れる体を鞭打って顔をゆっくりと左へ傾けると、
そこには、いつもの読めない表情に
少し焦りを浮かべた零が、ベッドの傍らで膝を折って、私を見つめていた。
「っ..……零」
私はいまだに少し乱れる息を無理やり飲み込んで、
確かにそこにいることを確認するように、
やっとのことでその名を呼んだ。
「…………」
零は、私を見つめたまま微動だにしない。
「……はぁ、っはぁ……」
静寂の中、私の小さく荒い息だけが響く。
私もまた、零から目が離せずにいた。
(やはり今の私が怖いのだろうか……)
……数秒の沈黙を破ったのは零だった。
「……まだ、お苦しいですか」
少し遠慮がちに、優しい声で私に尋ねられる。
「だ、大丈夫……」
まだ、少し痺れの残る体を無理やり動かし、
私は顔を背け、息を無理やり整え、
努めていつもの様にそう返した。
「……そう、ですか」
零の表情に一瞬だけ、
哀愁の色がよぎったような気がした。
「……では、
どうか私をお食べ下さい、お嬢様────」