幻想 少女日和
困ったことになったなと旅人は思いました。

自分で言っておいてなんですが、旅人には、今すぐ出来る余興なんて、思いつきませんでした。

それでも、今、何かしなければ、旅人は木に変えられてしまう……。

旅人は、何か余興に使える物は無いかと自分のカバンを漁りました。
そして、カバンの中からトランプを見つけました。

「こ……このトランプで何か致しましょう」

トランプを、女王様に掲げて見せて、旅人は言いました。

二人の女王様は、興味深げにトランプを見ると、面白そうねと手を叩いて喜びました。

「じゃあ、早速、そのトランプで余興を始めなさい」

「そうよ!手品でも始めるがいいわ!」

「手品は出来ません」

旅人の台詞に、女王様達は、揃ってガッカリした顔をします。

「手品がダメなら何が出来るというの?」

「そうよ!手品以外に何があるっていうのかしらん?」

旅人は、困りました。

トランプを使った余興なんて、実は知らなかったのです。

でも、トランプで何かしなければ、直ぐにでも木に変えられそうな空気です。

「どうした?旅人よ!まさか、何も出来ない訳じゃあないでしょうね!」

「本当は、何も出来ないんでしょう?旅人よ!無能な者には用は無いわ!今直ぐ木におなりっ!」

「まままままっ、待って下さい!そっ、そうだ。このトランプを使って遊びましょう!きっと楽しいですよ」

焦りに焦った旅人は、勢いでこんな事を言ってしまいました。
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