幻想 少女日和
でも、旅人がトランプで出来る事といったら、それしかありませんでした。

「遊びを?」

「例えば、どんな?」

「どっ……どんなって」

旅人は、トランプで出来る遊びを一生懸命考えました。
神経衰弱に、ババ抜き、七並べ……どんな遊びなら、女王様達に喜んでもらえるか、死ぬ気で考えました。

「どうした、旅人よ!まさか、思いつかない訳じゃあないだろうな!」

「何も無いなら、木におなり!」

「待って下さい!そう、ポーカー!ポーカーはいかがでしょう」

青ざめた顔で、旅人は言いました。

そんな旅人以上に、顔を青くして、女王様達は、声を揃えて言います。

「ポーカー!アナタ、正気なの?」

「はい、これ以上に無いくらい正気ですが……」

旅人の台詞を聞いて、女王様達の顔が、青から赤に変わりました。

「ポーカー!ああっ!ポーカー!」

「旅人よ!お前は何てことを言うのかしらん!」

「へっ?」

いきなり怒り出した女王様達に、旅人は訳が分からなくなりました。

「木におなり!」

「木におなり!」

「ええええっ!どっ、どうし……」

言い終わらないうちに、旅人は、木に変えられてしまいました。

「何てハレンチな旅人かしら!」

「本当に、何て恥ずかしい旅人かしらん!」

木になった旅人を前に、二人の女王様は罵詈雑言を浴びせます。

理由はよく分かりませんが、この森では、ポーカーは禁止されていたのです。

女王様達は、日が暮れるまで、木の前で旅人を罵りましたとさ。

おしまい。


あなたも、旅行へ行く際は、その土地の事をよくお調べ下さいね。






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