イミテーション彼氏 ~幼なじみと嘘恋愛~
「だ、だめだよ……ほら、茜たちには他校の彼氏って言ってあるしさ、しかも黒髪でメガネとか全然陽太と違うじゃん?」
わたしにとってもいい話のはずなのに、断ろうとした。
好きなひとに面と向かって偽物の恋人になってあげると言われるのは……辛い。
「ん? 別にそれくらいできるけど? 俺家ではメガネだし、ヘアスプレー何色かあるから黒にもできるし」
「いや……でも、」
「あ、」
否定しようとしたけれど、呟く陽太に遮られた。
いつの間にか着いてしまった陽太の家を見つめて、何か思いついたような顔をする。
「え、何? どうしたの?」
家に入っていく陽太の後に続く。
わたしの家は隣だけど、家に帰るのはいつももうあと数時間後。
家事のできない陽太のために夕飯を作って、一緒に食べていくのが習慣になってもう一年は経ってしまった。
わたしがその時間のことをとても好きだということに、きっと陽太は気づいていない。