イミテーション彼氏 ~幼なじみと嘘恋愛~
「そーいうゆずはさ、彼氏つくんないの?」
「え……わたし?」
わたしを恋愛対象としてみてないからこそ出る質問。
その切なさとは裏腹に、思い出される昼間の会話。
彼氏……ねぇ。
「……夏休みまでにつくんなきゃやばい」
「へ? なんでそんな切羽詰まってんの」
「わたしの数カ月にわたる嘘がばれる」
そしてわたしは陽太に話した。
クラス替え直後、わたしは友だちを作るのに必死だったこと、
そんなとき声をかけてくれた茜と葵との話題が彼氏の話だったこと、
その会話についていかなければわたしは一年間ぼっちの危機に立っていたこと。
「その茜と葵と海でトリプルデートすることになって……今さら本当は彼氏いないとか言えないんだよね」
完璧な自業自得だけど。
深い深いため息が出た。
「ふーん……」
陽太はいまだスマホを触ったまま。
そしてそのまま言ってきた。
「なら俺がゆずの彼氏になろうか?」