サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~
ドアが開いて、男性が1人入って来た。
仕事中のホテルマンという風貌がみるみる変わって、屈託のない笑顔になった。
「真裕!」
「波多野?何やってんの?こんなところで」
「こんなところじゃねえ。お前、何やってるの。こんなとこに黙って予約なんかしやがって。
俺が名簿チェックしたからよかったものの、うっかり見逃すところだったじゃないか。
お前の携帯番号覚えてたって、俺ってすごくない?」
二人は、遠慮なくガッチリ握手して、空いている方の手で、お互いの肩を叩きあってる。
「分からないようにやってるのに、なんて余計なことを」
「黙って悪いことをしようとするからだ」
「それより、なんでお前、ここにいるの?」
井上さんが、波多野と呼んでいる同じくらいの年齢の男性に話しかける。
「そんなことより、彼女が婚約者?」
「いや。その、まだなんだけど……」
「籍入れるのは、いろいろあるから、人それぞれだぞ」
「婚約者じゃありません。私は、職場の同僚です」
私は、自分の名前と、部署名を名乗った。
「へっ?」
波多野さんは、びっくりして私の顔を見ている。
「まだ、結婚するって決まったわけじゃないから」
波多野さんは、ますます訳が分からないって顔になる。
それから、じゃあ、何しに来てるんだ?っていう顔になる。
「でも、結婚するんだろ?大広間だけでも日付見とく?」
「波多野、だから結婚はまだ先だ」
「じゃあ、何でフェアなんか見に来たんだ?一般向けの結婚式なんか、お前が挙げる式と、比べても、どれも参考にならんだろう?」