サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~
一応、ホテルの人が神父さんの役をやって、くれることになっている。


井上さんと私は、名前を呼ばれて実際に祭壇の前に立ってみる。

祭壇の背後から、自然光のたっぷり降り注ぎ街の景色が一望できる。


「うわっ、すごい」


圧倒されそうになって声が出てしまう。


バージンロードは幅があって、トレーンの長いドレスも、プリンセスラインみたいなボリュームドレスもよく映えますよ、と係りの人に説明される。


「さあ、お二人で向き合ってください」



まっすぐ私を見つめる彼。精悍な顔。少し緊張しているみたい。
真剣に私のことを見つめている。

「えっと……あの」
そんなに、まじまじと見ないでください。


「何も言わなくてもいいから。俺のこと見つめてて」
そ、そんなこと言われると余計に見られなくなる。


「でも……」
無理……ドキドキして死にそう。

お願い、これ以上近づかないで。
気が付いたら後退りしてた。


「ダメ。目をそらすなって」
怒らせちゃったかな。


どうしよう。

何て言ったらいいの?

私は、どうしても井上さんをまともに見られなくて、少し視線を下に向けている。


言われた通り、ベールを上げる仕草をする。



「はい。ありがとうございました」



「誓いのキスは、本番に取っておきましょうね」


係りの人に言われて、彼は目をそらした。


もう少しこのままだったら、涙ぐんでいたかもしれない。
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