サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~

今……

何て言いました?

『よかった。やっと泣いてくれた』
確かに、そう聞こえましたけど。
私の空耳ですか?


意味が分からず、私は相手の顔をキョトンと見上げた。


彼は、私のことを自分の胸に押し付け、しっかり腕に収めたままでいる。

大仕事を成し遂げた後のトレーナーのように、彼は私を支えながら労っている。

悪いけど、私、今、人生に敗北したボクサーのような気分なんですけど。


よかったって言いませんでしたか?


「やっと泣いてくれた?どういうこと?」

もうダメ。くらくらして、めまいがしてる。

この人の事全然わからない。
彼の満足そうな顔を見てると、余計にわからなくなってくる。



「どうしたら、君がこうして泣くだろうかって結構考えたんだ」
どうやら、彼は本気らしい。


「あの……余計に意味が分かりません」


彼は、私に顔を近づけた。

「どうしてわからないんだ?俺といれば、こんなに、幸せな生活が送れるってずっと君に見せてるのに、どうして、いつも浮かない顔してる?どうして他のやつの事考えてる?」

なぜか逆切れされた。

私は、泣きはらした顔で、彼のことを見た。
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