サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~
何だか訳の分からない感情がわきおこって来た。
急に頭に来た。
ちょっと待ってよ。何でこんなことするの?
どうして、私にこんな真似するの?
どうして、放っておいてくれないの?
私は、井上さんの腕から逃れるために、自信満々で私を見つめてる彼の胸を、力いっぱい押した。
私は竜也に対する怒りは、だんだん目の前にいる井上さんに向かっていく。
見当違いなのだけれど、そうでもしなければ、耐えられなかった。
みるみる感情が高ぶって、イラついた気持ちを彼にぶつけた。
「どうしてこんなことするの?誰がこんなことをしてって頼んだのよ」
豪華な食事も、素敵な指輪も、結婚にまつわることが嫌いなわけじゃない。
婚期を前にした女性で、そういうのが嫌いな人っている?
きれいなドレスを前に、自分が着る時のことを思い浮かべて、うっとりしない人っている?
手にしてすぐなら喜んで見ていられる。
でも、すぐにそれは、自分には手に入れられない、はるか遠くにあるものだと思うと、途端に悲しくなる。
どんなに素敵なものだって、手の届かない遠い場所のものだと分かってしまえば、そういうものを見るのだって辛くなる。
同じように竜也は今頃、彼が本当に人生を共に生きようと考えたパートナーと過ごしていて、私のいないところで、彼女に微笑んでいると思うと、身が張り裂けそうになる。
「好きな女性を、美しく着飾って眺めただけだ。それのどこが悪い」
「着飾ったって何の意味があるの?酷いよ。どうして、あなたって、私の手の届かないものばかり、そうやって私の前で見せびらかすの?」
彼の胸をこぶしで叩いた。
何いってるんだという顔で、井上さんが、私の顔を見つめる。
「どうして、手が届かないなんて思う?」
「どうしてって……」