サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~
「もうすぐ、人のものになる男のことなんか、考えてるからだろ?いい加減にあきらめろ。手の届かないのは、花嫁になることじゃない。あの男のことばかり考えてることだ!早く、目を覚ませ」
彼が、私の腕をつかんで揺すった。目を覚ませって言って。
さっきと打って変わって真剣な顔つきになる。
「早く俺のこと見ろ。君が見なきゃいけないのは、この俺だろう?」
「あの、お客様……申し訳ないのですが、他のお客様もいらっしゃいますし」
係りの人が、申し訳なさそうに言う。
「わかった」
「花澄?来い」
彼は、放心状態の私の手を取る。
「来いって、どこへ?」
手を引っ張られて、つんのめりそうになる。
「ついて来ればいい。早くしろ」
彼から離れようとした。
「嫌よ。着替えて帰るんだから。あっちへ行って」
彼は、私の腕をしっかり捕まえていう。
「逃げられるもんなら、逃げて見ろよ」
彼は、さらに私の腰をぐいっと力づくで引き寄せると、いつものように私の言うことなんかあっさり無視した。
後をついてきた、係りの人にいう。
「せっかくだから、このドレス1日借りるね。あっ、細かいことはバンケット係の波多野と相談して」
そこまで言うと、井上さんは、行くよと言って。
頬にキスをした。