サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~
二人で、窓際に並んで立った。
窓から見える景色は、普段私が暮らしている街で、自分のその中の一人にすぎないのだけれど、こうして高い所から見下ろし眺めてみると、まるで別次元の世界にいるように見える。


「なんて人なの?最初からこうしようって思ってた?」


彼は、まさか、そんなわけないと笑っている。
「最初から、こうしようと思ったわけじゃないよ。でも、よかった。こうして一緒にいられて」
彼の腕がすっと伸びて、私の肩を抱いた。


「あなたって、私を泣かせるために、わざとこんなことしたの?」


彼は、真面目な顔でそうだよと頷く。

「こうやって泣いてくれないと、俺は、君を慰めてやる事ができないだろう?」


「慰める?」


「君は分かってない。泣きはらして、思い切り怒りの感情を表にだしてからじゃないと、先には進めないんだ。だから、強がるなよ。もっと泣いていいくらいだ」



「泣くもんですか」
こんな横暴な人の術中にはまるものですか。

泣けって言われて、はい泣きますなんて言えない。
特に、彼のような人の前では。


彼の言う通り一日を満喫しよう。

確かに。手に入らないもののためにくよくよしてても仕方がない。



「わかった。約束だ。もう泣くなよ」

ちょっと待って。
我に返る私。

ここからどうやって帰るの?

井上真裕と、ここでどうしようっていうの。

どうやって、脱ぐんだろう……
着替えはないし。何か部屋の中に置いてないかな。

バスローブならありそう。それに着替えようかな。


「待って。自分で脱ぐな。まだ着たままだ」

彼が、ウェストに手を伸ばして引き寄せる。

「脱ぐな。ドレスは着たままだ」

着たままって、どうするのよ。これじゃ、身動き取れないでしょ?


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