サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~
「まずは、そこに座れよ」
窓際に置かれたソファに何とかドレスを整えて座らされた。
ゆったりとしたソファだけれど、ウェディングドレスを着たままだと、二人で座るには少し窮屈だ。
だんだん暮れかかっていく東京の街を、ソファに座って眺めている。
彼が、シャンパンと花束を持ってきてくれた。
「写真撮りたいと思ったけど、カメラ置いてきた」
慣れた手つきで、ゆっくりとシャンパンが注がれる。
「残念だね」
「いいよ。君のドレス姿なら、もう一度写真を撮るチャンスあるはずだろう?」
オレンジ色に色づいて、それからだんだん隅を流したようにゆくりと暮れていく空。
「花澄?こっちへおいで」
まっすぐ彼に見つめられて、目をそらした。
背けた顔が、ゆっくり彼のほうに向けられる。
「ダメ。俺の事ちゃんと見て」
さっき泣きはらしてるし、きっとひどい顔になってる。
私が、恥ずかしさのために、目をそらそうとするのを、彼は許してくれなかった。
何度も、キスしては、そのたびに私を落ち着かせ、
「大丈夫だから。俺に任せて」と耳元でつぶやく。
少しずつ、彼の体温になじんでいく。
キスを深いところまで受け入れていくように、彼の体を受け入れていく。
「やっと、自分の好きな女性がこの腕の中にいるんだ。そう思うと震えがくる。ずっと思ってたんだ。君ってこうして抱いた時どんな顔するんだろうって」
「井上さん?」
「好きな女性抱くってどんな気分だろう。そう思うと気持ちの高ぶりが収まらない。正直言ってここまで心酔してどうにかなりそうだって思ったことなかったんだ。だから、今も戸惑ってる」
「冗談でしょう?たくさん女性を見て来たあなたが、そんなこと思うはずない」
「花澄?俺はこうして考えるよ。たくさん人を見て来たから、君みたいな人がいいんだって。優しくて、本当に俺のことわかってくれる人がいいって」
「ちょっと待って、私、そんな大した人物じゃない。私のこと、そんなに買い被らないで」