サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~
菜々さんは、ナイフとフォークをテーブルにセットしてくれる店の人がいる前で、大声で笑い出した。
「それはないって、からかわないでよ」
うわあ、気持ち悪いって声と大きな笑い声に包まれた。
今度は、笑い過ぎて涙を流したみたい。
「丸山さん、それ、すごい誤解」
「誤解?」
「真裕とは、私が生まれてからずっと一緒だったの。だから、彼のことならよく知ってるわ。
私達のお互いに対する感情って複雑で、一言では言えないけど。
恋人同士のような感情じゃ全然ないわ。だから、彼が私を好きだって言っても、一人の女性として思ってるわけじゃないのよ」
「そんなこと、ないと思うな……」
私は、真裕さんのことを考えていた。
このお嬢さんは、彼のことを兄だと思っている。
その、兄のような人は妹に好意を持つわけないと決めつけている。
「そう言われても困るわよね。でも、本当なの。
彼はいつも、周りにきれいな女の子がいて、その中から一人選んで仲良くしてたわ。
本当に私のこと好きだったら、私の前でそんなことする?
私の目の前で、数えきれないほどの女の子とデートに行ってるのよ。
そんな男がいたら、好きになる?私にとって真裕は兄も同然だった。
だから真裕が、そういうことしても、気にならなかったの」
私は、うーんと考え込んでしまった。
真裕さんが何を思って、そんなことをしたのだろうか?
思春期の女の子への接し方を間違えたのか?
なぜ、あれだけ他の女性を魅了するのに、菜々さんの中では、竜也以下なのか……
バカだなあと思う。
あんなに一番近くにいて、兄のように慕われてるのに井上さんは、彼女に気持ちを伝えられないでいる。
不器用でバカ過ぎて涙が出る。