サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~
私は、少しだけ彼に肩入れしたくなった。
正直な気持ちを、ずっと言いそびれたのかもしれない。
冗談ばっかり言って、励ましてるうちに本当の気持ちが分からなくなってるのかもしれない。
バカな井上さんにつられて、私もバカになってみるか。
好きだよって伝えてるのに、彼女にわかってもらえないって。
本当に苦しいよね?
「そうだったとしても、本当の彼の気持ちを理解したことにはならないでしょ?」
複雑なのか、単純なのか両極端で、本当に区別がつかないってこともある。
ごく、稀なことだけど。
「丸山さんは、真裕のことよく考えててくれるのね」
「真裕さんが考えて欲しいのは、私じゃなくて菜々さん。
あなたに考えて欲しいのよ。真裕さん、ずっとあなたを見て来たのよ。
ずっと大切にしてきたのよ。
お願いだから、それはわったげて。彼の言葉をきちんと受け止めてあげて。
誤魔化さないで、ちゃんと受け止めてあげて」
菜々さんが真剣な目で私の顔を観察してる。
「そんなの……信じられません。あなたとうまく言ってると……」
「そんなふうに、見せてるだけよ。
私たちがくっついてると、あなたも竜也も私たちに対する罪悪感が和らぐし、竜也に対する社内の批判も収まるのよ。
彼が本心でやってると思う?
みんな、あなたのためにやってるのよ。お願いだから……」
何、一生懸命言ってるんだろう。
私、振られてるも同然なのに。
「菜々さん、真裕さんのこと、もう一度考えてあげてください。
彼の私に対する気持ちは、一時的なものです。彼の気持ちが本物だとしたら、竜也への気持ちは……変わりますか?」
菜々さんは、じっとうつむいたまま顔を上げなかった。
「ごめんなさい……どうしたらいいのか」
もう迷ってる人のことなんか考えたくない。
「竜也とのことは……
もう、終わった事です。菜々さんの好きなようにして下さい」
彼女がどっちを選ぼうとも、外れた方は、運命だってあきらめしかない。
本当に、変なお嬢さんだ。
あの井上さんより、竜也を選ぼうとしてるなんて。
「ご馳走様。西田専務にもよろしくお伝えください」
ランチ一回分でチャラなんて安いもんだけど。
私は立ち上がった。
「ちょっと、待って。花澄さん、店舗運営の男性とお付き合いするの?」
立ち上がろうとした私を、引き留めようと彼女が言った。
そんなことまで、よくご存じで。
「はい。そのつもりです」
菜々さんにそう言えば、真裕さんに伝わるだろう。