サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~
「専務が井上さんに気を使ってるんですか?」
何で専務が、娘の元恋人だとはいえ、一社員に気を使うの?
――なんだ。知らないのか?俺らの関係のこと。
電話の向こうから、くすくすと笑い声が聞こえる。
西田のおっさんと井上さんが、殿様と、お小姓姿で頭に浮かんで、胸焼けしそうになった。
げっ……
「あの……
朝から何が言いたいんですか?」
――昨日、飲みすぎてたから。体、大丈夫かなと思って。
「心配してくださって、ありがとうございます。ちょっと二日酔いですけど大丈夫です」
――そっか。それならよかった。
「ゴルフ大変ですね」
こんな時期に、外を歩き回るなんて人の、気がしれない。
――ああ。俺以外は年寄りだからな、荷物持って後をついて行かなきゃならない。
「他に、何かありますか?」
ごめんね。もう眠くて限界。
暑くて大変なのは、気の毒だなって思う。
シワだらけのワンピースなんかもういいか。これ以上、いくらシワになっても構わないや。
また、寝よう……
――ああ。ええっと。
「んん?」
――君の声が聞きたかった。
「声?ですか?」
顔は好みじゃないのに、声は聴きたいの?
よくわかんないけど。
――そう。君のその眠そうな、ガラガラ声。ちゃんと目を覚ませ、もう朝だぞ。
そろそろ行かなきゃ。じゃあな
声、聞くために電話くれたの?
わざわざ?
ガラガラ声かどうか、知りたかったの?
それなら、喉の調子大丈夫って、メールすればいいじゃないの。