サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~
「花澄ちゃん、そうなんだけと……」ちょっと困ってる顔をする。
ダメ。話なんか聞いちゃ。
絶対ダメだって。
『私は、幹事だけで手一杯です』
ほら、三回繰り返して。
そんな……
捨てられた、ワンコみたいな目で人を見るなってば。
もうだめ。
チョロすぎ、私。
「何ですか?」
ああ、もう、本当にバカだ。
「花澄ちゃん……」
「はい?」
話を聞いてもらってほっとしたせいか、口元がゆるむ。
悪い人じゃないのだ。
こういうのも全然演技じゃないし。
本当に困ってるのもわかるし。
だから、たちが悪いっていうこともある。
「女の子達、俺たちの式のこと、どう思ってるかなと思って」
「どうでしょうね」
雨が降ればいいね、くらいは思ってるかもよ。
二人の婚約は、社内で大きな話題になっている。
何しろ専務の美人のお嬢様が、どう見ても、平凡な庶務課の、何の取り柄のない男と婚約すると発表されたのだ。
会社の多くの人が、竜也の事はともかく、菜々ちゃんの事を知っている。
平凡な庶務課の男と付き合ってた、私の事は、ほとんど話題にならなかったけど。
今考えたら、井上さんという、うちの出世頭を袖にして、
どこにでも居そうな男を選んだ専務のお嬢さんは、相当、変わってるのか、おかしいのか。
まあ、いいや。竜也のことなんかどうだって。
本当に。そんなことは、どうだって。
何でもいいけど、あんた、楽しそうだよね。ニコニコして。
竜也が、一生懸命説明している。
「ん?」何だったっけ?
「一応、それとなく二次会に、来てくれるかどうかでも知りたいんだけど」
「頑張って聞いてください。陰ながら応援してます」
「えっと、ちょっと俺一人だと……」
「嫌です。やりません」
そんなこと絶対嫌だって ! !
嫌に決まってるでしょ?
どんな顔して、あんたの結婚式の二次会の出欠何か取らなきゃなんないのよ!!