サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~
女の子たちが行ってしまうと、井上真裕がグッと距離を詰めてくる。
「なんでお前がそんなことしてる」人気のない隅の方のスペースに連れてこられた。ここなら、例え井上さんが私を絞め殺そうとしても、大声を出せば人が来る。
「えっと、人数が多いから大変だろうなって思って」
それは、ちょっと理由としては苦しいけど。
「そんなもん、社内メールでいっぺんに送れ」
へっ?メールで?
そんなのあり?
「メールで送っていいの?」
本当にそういうもの?
「嫌なら、自分たちで送れって、突っぱねればいい」
「はあ。そうか。そうですね」
さすが出来る男は違う。
彼は、感心して頷いてる私に言う。
「アホか、お前」
やっぱり、口は悪いけど。
「アホで、悪かったわね」
問題解決。
長居は無用。
さっさと帰ろう。
「おい、ちょっと待て?それ、もう一度見せて」
呼び止められて、せっかく取り返したリストを取られた。
直ぐに彼は、手にした紙を見ている。
なぜだか、じっくりよく見てる。そんなに面白いことは書いてないと思うけど。
「ん?」
「なんで俺まで、結婚式に参加することになってる?」
ああ、と私は心の中でうなった。
まだ説明してないけど、名簿の並び順のどこに名前があるかで、自分が結婚式の参加者になってる。彼ってやっぱり頭がいいのね。見ただけで気が付いちゃった。
「出ないつもりだったの?」
と間抜けな質問をしてしまって、あっそっか。
彼だって、私と同じく出たいわけないかと気が付いた。
ごめんなさい。自分だって出るもんかって思ってたのに。
ちらっと彼の表情を見る。
よかった。怒ってないみたい。
「二次会引き受けたのって、式は不参加でいいって条件付けたはずのに」
「私も?」
「あんたのこと何か知るか」
井上さんに、あっさり振られた。
「ちょっと、借りるぞ。これ」
「はい」反対したら、誰かに向けられる怒りを買いそうだ。
「あの、くそタヌキ!!」
井上さんは、リストを持って行ってしまった。
私は、タヌキって誰だろう?
と考えながらオフィスに戻った。