サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~

彼のことを覚えてたからって、近寄りたいわけじゃないからどうでもいいけど。


久美子の近くまで行って彼女に手を振った。


彼女は電話に出てて、話に集中している。
一瞬の間をおいて、ごめんと手を合わせてジェスチャーで返してきた。
時間がかかりそうだなと思った。


私は、彼女にあっちにいるねと指で示し、彼女の邪魔にならない所で電話が終わるのを待った。


ぼんやり久美子を待ってたら、フロアのすぐ近くに竜也の姿が見えた。


ここに居たんだ。呼び出されたんだな。
備品のことかな?
ここにずっといたから、席にいなかったんだ。


竜也が、ペコペコとお礼を言うようにして頭を下げている。いくら、収益を生まない部署だと言っても、そこまで腰を低くしなくてもいいのにと思う。

相手がやっと話を切り上げて、上着を取り上げた。
用事が終わって上に戻るところみたいだったから、近寄って声をかけた。

私の顔を見ると、一応は嬉しそうな顔をする。


「ああ、丸山さん、石田さんとお昼かな?」
丸山さんは、少し白々しく聞こえるけど。


「はい」


こう呼ばれるのは、相変わらずピンとこない。


「さっき、頼んだやつのとかな?」


「はい」


私たちは、目立たないように、私がいた隅の場所まで戻って話をした。


「どうだった?」
聞こえたらまずいみたいに、小さな声で言う。


「まだ、そんなに聞いてませんけど……」
うやむやに答える。


「欠席ばかりとか?」
ちょっとこたえたかな。言い方をいろいろ考えたけど。上手く行かない。


「まだ、二人に聞いただけですから。気にしないでください」
結局、慰めに聞こえないまま言う。


竜也は、ふうと息をついて、フロアの隅の壁にもたれた。
すみませんねえ、役に立てなくて。

「何でもいいですけど、井上さんに協力してもらわないとどうにもならないでしょ?」
本当にこれからは、ちゃんとしてほしいです。


「ああ、その通りなんだけどね」


「まだ、話しあってないんですか?」

もう、どこまで他力本願なの。
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