サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~
「ちょっと来い」
井上さんにそう言われて、私は、パーティションで区切られた会議スペースに、引きずられるようにして連れてこられた。
なんで、私が説教部屋行きなの?
中に入れられ、バタンとドアを閉められる。
井上さん、すごい形相で私のこと睨んでる。
いったい何でこんなところまで連れてきたの?って聞こうと思ったら、いきなり彼の腕が伸びて来て、抱きしめられた。なぜか私は、彼の胸に顔を押し付けられてる。
ええっ?
怒ってるんじゃないの?
いい匂い。全身彼に包まれて夢のようなんだけど。
ちょっと窮屈だ。
「大丈夫か?あんな無神経な奴に頼まれたからって、何やってるの?ちゃんと断れよ」
んん?私の事、心配してくれてるの?
ちょっと、待って。何でこんなことになってるの?
「あの、井上さん」
彼の胸に顔を押し付けられて、鼻がふさがれている。身長差があるからちょうど両腕で締め上げられるように息苦しい。
顔が好みじゃないのは、分かってるけど窒息させるのは止めてください。
口紅がシャツに付かないように、とっさに口をぎゅっと閉じちゃった。
苦しいって。
マジで口から空気が吸えない。
時々、気も遠くなってるから、このままいくと本当に窒息すると思う。
私は、彼の腕の中で、息継ぎをしようとしてもがいていた。
本当に、ダメ!!限界。死んじゃうって。
「なあ、ちょっと、そんなにもぞもぞ動くと、まずいんだけど」
私だって、呼吸できないと生命の危機で非常にまずいんですけど。
腕が離れて、自由に空気が吸えるようになった。
「はああっ」と一気に空気を吸い込む。
ほっとしたのも束の間、
井上さんが、私の頬を、両手で挟み撃ちにして顔を押さえた。
呼吸も整ってない、顔を真っ赤にした状態で。
小さい女の子にするみたいに。
ぎゅうって両手で挟んで私の顔をを引き寄せる。
「痛いんですけど」
「面白い顔だな……でも、可愛い」
好みじゃないから、面白いになったの?
それって、格上げされてるのか、下がってるのか分からないけど。
「可愛いいなんて言われなくてもいいから、もう離して」