サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~

井上さんは、好みじゃないっていう割には、私の顔をじっと睨んだり、指で肌の感覚を確かめてる。それがすむと、またじっと私の顔を捕まえたまま、どっか欠陥がないか検品してるみたいに見てる。

きれいじゃないのは分かってるでしょ?だから、もう離して。

にゅうっときれいな顔が近づいてきた。
近くで見るとすごい迫力です。

やることが男っぽくって、目鼻立ちが整っている。
言葉が明瞭で、何されても凛々しいなんて、女の子達の言葉を思い出した。
彼は、凛々しい顔をさらに顔を近づけて来た。

な、何してるんですか?_
顔ぶつかりますって。

「顔真っ赤だな。お前、なんて顔してる?」

逃げようにも、私の顔はしっかりと固定され1ミリも動かない。

彼は、高い鼻を私のおでこや鼻につんと突っつくように当てる。


「そんな目潤ませて、上気した赤い顔して。

そんな顔みせるな。俺にどうして欲しい?」


唇が触れそうなくらい、顔を私の頬にくっつける。私が逃げようとすると、顔をぎゅっと前に向けて、今度は軽く鼻をかまれた。

彼の熱っぽい息が顔にかかって、くぐもったバリトーンの声が薄い唇から漏れ出して私の耳をくすぐる。声が毒のように効いてきて、しびれたように体が動かない。


熱っぽい目をされると、こっちも声が出ない。


「急にそんな切ない顔して。キスしてほしいんだろ?本当に予想外だよ。君がこんなに情熱的なんて。ちょっと誘われたからって、仕事中、君に我を忘れるなんて。でも、止められない。キスだけじゃ足りない。このまま押し倒していい?」


「なっ、なに言ってる……」


ムチュって音した?


唇……食べられてる?優しくなぞってる?

とろけるみたいに……

軽く甘噛みされるように。何度も……何度も。


「もう少しだけ、充電させて……」


「ちょっと!」何するの……



「もう限界、お前が悪い」


口を開けたら、彼の舌が入ってくるって分かってるのに。


「……止めて」
絡まった舌に、言葉を奪われる。

何も考えられない。



「このぐらいにしないと、ほんとに押し倒しちゃうな」


「ええっ?」


「ああ……本当だ。こんなところじゃダメだな。

ごめん。ブラウス開けてるから。下着直してボタンはめといてね。じゃあ、次は、大丈夫な場所でな。あっ、リストの名簿通りに社内システムでメール送っておいたから」


「あ、ありがとうございます」
急に、業務連絡ふうに言われて、お礼を言ってしまった。



「なに?キスのお礼?」
名残惜しそうに、口元を見つめられた。


「ち、違います」


「髪も直しといてね。くちゃくちゃにしちゃったから」


じゃ、またな、と言って彼は出て行った。


私は、落ち着こうと椅子に座って、持っていた鏡をのぞき込んだ。

ぼさぼさの髪に、はげ落ちた口紅。


本当に、ひどい格好だ。

好みじゃないって、言ってたのに。
何でキスなんかしてきたのよ。
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