サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~


こんな時、誰?電話なんて、かけてくるのは。
のろのろ体を起こす。


――悪い。ずっと、電話掛けてくれてただろう?取れなくてごめんな。花澄、今何やってる。おい、平気か?


「何やってるのか分からないし、平気じゃない」
しばらく、沈黙……


そうだ。店の人に連絡取れる人はいる?って聞かれて、井上さんの携帯に掛けてたんだっけ。


――お前、相当酔ってるな。もういい。今、どこにいる?

「店」


――店じゃわからんだろう?


「お客さん?ちょっとすみません」

そう言って、いきなり携帯を取り上げられた。

バーテンさんが電話に出ながら、丁寧に謝る。

「あの、私まだ、話してるんですけど」

彼が、井上さんに向かって話し出す。

「あの、すみません。この女性お知り合いですか?実はうちの店、もうとっくに営業時間が過ぎてるんですけど、彼女、酔っぱらって動けなくなちゃったみたいで、俺、このまま自宅に連れて帰ってもいいですけど?どうします?引き取りに来ますか?じゃあ、お待ちしてます」

「お持ち帰り?」

さっきまで、相手をしててくれた店の人だ。

バーテンダーになる修行してるって言ってたっけ?

俺、まだ残ってるから飲んでて大丈夫ですよって言ってくれたんだ。


「お持ち帰りしてもよかったですか?俺でよければ、彼のこと待たないで店を出てもいいですよ?」
悪魔のささやきにも聞こえた。
どうしてお酒を飲むと男の人の声って色っぽく聞こえるのかなあ。

優しく髪を撫でてくれるけど、
突っ伏して寝てるカウンターのテーブルが、冷たくて気持ちいい。

だから、
「もう少し寝てます」って答えたのかも。



< 71 / 192 >

この作品をシェア

pagetop