サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~
「でも、やっぱり、いろいろ考えると、みんな一つにつながってるのかも」
井上さん、デリカシーのない酔っ払いに愛想が尽きたのかな。
深くため息をつく。そんなこと青木君に言えないけど。
「んん?」青木君が顔を上げる。
「竜也と終わったんだなって、思ったのかな」
「元カレのことだよね?」
「うん。竜也とは、これで終わりなんだって、頭ではちゃんと分かってた。でも、どこかでそんなはずないって思ってて。その気持ちが萎えそうになると、誤魔化してきたの。
でも。そうも言ってられなくなったのね。結婚式が近づいて、竜也のいろんな面が見えてくると、もう前の彼とは違うんだと思った」
そうだ。昨日は、井上さんにそういう話をしたかったんだ。
酔ってなきゃ気恥ずかしい話を。
でも、失敗しちゃったんだ。
「そっか。それだけ話せるってことは、頭の中も、すっきり整理されてるじゃないか?そのことは、もう吹っ切れてるみたいに見えるけど」
「ん、そうかな。そうだといいんだけど。それで、昨日井上さんにその話をしようと思ったんだけど。見事に無視されちゃった。そっちの方が傷ついたんだなきっと」
青木君の目が大きくなる。
「井上さん?井上って、あの、井上真裕?」
「ええ、そうよ」
「井上さんに会いに行ったの?」
信じられないって目で見る青木君。
一応、嘘はついてないと思うんですけど。
「ええ、そうよ」
「花澄ちゃん、うちの御曹司とどういう関係なの?」
「御曹司?」ん?
「ええ?なに言ってるの。彼にプライベートで直接会いに行くってことは、彼と親しいんだろ?うちの会社『ineホーム』は、ineホールディングのグループ会社だよね?」
「はい」
「社長の名前は?」
「井上眞子……社長」
先代の社長が亡くなって、現社長、つまり眞子社長が会社を引き継いでから、うちの会社は大きく成長してきた。
「眞子社長のことは、知ってるよね?」
「うん」
「その一人息子がうちの会社で働いてるって、知らなかった?」青木君もはやあきれ顔だ。
「知ってたけど……彼がそうだとは……」全然思わなかった。
信じられない。総務部に勤務してて、すっかりその情報が抜けてるだなんて。
「まあ、そうかもな。関心がなきゃ興味持たないかもね。相手もいちいち、俺がそうだって名乗らないからね」
何やってるんだろう。私……
「そっか。近づきすぎたんだ。だから線引かれたんだ」