サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~
二人が出て行くと井上さんは、すぐ横に座って私の手を取った。
私の左手を両手で包んでじっと黙っている。
手から伝わってくるものの事は、考えないようにする。
「具体的な対策、教えてください」
タイミングを図って、手を引っこ抜こうとしたけど引き戻された。
彼がどんなに怒ってたって、これ以上壊れるものなんか、ないかと思うと開き直れた。酔っぱらって絡んで来た最低女だって思えば、何を言われたって我慢できる。
ずっと伏し目がちに、久美子か作ってくれたデータを見ていたけど、いつまでたっても彼が言葉を発しないので、気になって顔を上げた。
彼と目が合った。
さっきとは打って変わって難しい顔をしている。
怒っているのとは違う。戸惑った顔だった。
どう言ったらいいのだろう。困り果てた顔。
どうしていいのか分からない顔。
「えっと……」
「ごめん。この間は、どうかしてたんだ。君の行為にちょっと苛ついて。済まなかった」
彼は、頭を下げて謝った。
謝る?何で?
ここは、怒って捨て台詞いって、ドアを蹴って出て行くんじゃなかったの?
キツネにつままれたみたい。
いったいどうしちゃったの?
「私の方こそ気分を悪くさせてしまったのなら、すみませんでした。謝ります」
彼の体がグラッと傾き、私の方にもたれてきた。
彼は、私の頭に触れながら言う。
「同期のやつらには、ちゃんと話とく。俺から言えば問題ないだろう」
彼が、更に体を傾けて、両腕で私を包み込む。
「わかりました。ちゃんとしていただければそれで結構です」
手を引き抜いて、傾いた体を力一杯押して、立て直す。