サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~
運よく腕がほどけた。

「ああ」力なく彼が言う。

体が自由になったので、そのまま椅子から立ち上がろうとした。

「では、これで失礼します」


「では、これでって。話は、まだ終わってないぞ」

腕ではなく、スチールの椅子を押されてバランスを崩した。

私の体は、ガタンと音を立てて椅子に逆戻りした。


「ち、ちょっと、何するんですか?」


「だめ。まだ、帰るな。話があるって言っただろ?」


「私たちは、二次会がちゃんと行われればそれでいいです」
私は、散らばった書類をまとめた。

彼は、私の手元をじっと見つめている。
「なあ、花澄?いったい、誰のためにそんなに必死になってる?」


「みんなのだめです。二次会が失敗して喜ぶ人はいません」


「みんなのため?そんなわけないだろ?少なくとも、俺の為には、そこまで親身にならないじゃないか?」


「人徳の差です。井上さんの為にそこまでしないのは……」
井上さんが意地悪して、椅子から出られないないようにしてる。だから、わざと彼にそう言った。


「誤魔化すなよ。ちゃんと質問してるだろう?君は、誰のために、幹事なんか引き受けたんだ?そいつのために、ひどい目に合ったのに、まだ助けてやろうって思ってるのか?」

「困ってるから、助けようって思っただけです。竜也のためじゃありません」

「あっ、そう。じゃあ、やっぱり協力しない」
プイと、横を向いてしまった。


「なに言ってるんですか?今、約束したばかりでしょう?」


「だって、ムカつく。協力なんてしてやるかよ。どうせ俺には、人を動かず徳はないからな」


「大人げないですよ。そんな、子供みたいにムキになって」


「じゃあ、もっとムキになってやる。言うことを聞いてほしいなら、今すぐここで、抱きしめて、キスして」


「ふざけないで」
何でキスしろなんて言うの?


「ふざけてるのは、御曹司だからって付き合えないなんて、バカな拒絶することだろ?撤回してくれたら考える」


「前にも言いましたけど、井上さんは私の恋愛対象じゃありません」


「じゃあ、この話はなしだ。交渉決裂。俺は幹事を降りる」
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