サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~
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彼からは、すぐに電話がかかって来た。
仕事中にいきなり携帯電話が鳴って、井上真裕がいつものように一方的に用件を伝えて来た。
――銀座、土曜日、11時に。地下鉄の駅で待ってて。出来れば、少しおしゃれして来て。
どこか行くつもりなの?と、詳しく聞こうとしても、何も言ってくれない。
「えっと、あの……」
彼が、服装もきちんとして来いと指定している。
おしゃれって……何を着てくのよ。
いつも会社に行く格好じゃダメってこと?
自宅のクローゼットにかかってる洋服のことを思い出してみたけど、どれも、似たような通勤服でパッとしない。
真裕と豪華な食事をしたときは、そういう場にふさわしい服を買ってもいいのかなと少しだけ考えた。
でも、そういう服っていつもの服と値段が一けた違う。
それで、一気に買う気がなくなったんだ。
今度、結婚式で着ていくものが必要になったときに、新しくすればいいと思った。
――着ていくものがなければ、用意しようか?
「い、いいえ、結構です」
滅相もない。
そんなことしてもらう理由がないってば。
――この間、着てたワンピースで大丈夫だ。
「ああ、はい」
ビジネスっぽくないってことかな?
あのワンピースでいいと言うなら
クリーニング出してあるものを、そのまま着て行けばいいのか。
「どこに行くの?」
――内緒だ。
何度聞いても、彼の答えはこればっかりだ。
土曜日、約束の時間通りに駅に着いて、彼を待った。
言われた通りの服装で、彼を待った。
少したって彼が来た。
井上さんは、質の良さそうな紺の薄手のジャケットに、白っぽいTシャツを着て、薄いグレーのパンツという格好だった。
私は、この間着ていたシフォンのワンピースに、色を合わせた靴を買った。
靴を新調したからって、たいして変わりはないけど。
彼の方は、スタイルがいいから何を着ても似合う。
隣にいて気後れしてしまうから、少し離れて歩くことにする。
そうすると、彼が気にして立ち止まって待っていてくれる。
何度も同じことをしたら、しっかり手をつながれた。
彼と並んで、銀座の街を歩く。