サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~
「でも、これ……婚約指輪でしょ?」給料三か月っていうんだよね。
「ああ、だからパーティー用にちゃんとしたの買おう」
「井上さん……そうじゃなくて」
これ、受け取ったらどうなるか、井上さんも心は決まってますか?
エンゲージリングって言われてるものを買って、相手に贈るって、特別な意味になるって本当に分かってますか?
「婚約は、しなくてもいいんだが」
彼がつぶやくように言う。
「せっかくそういうお気持ちになられてるのなら、後々のことを考えられてプロポーズの時の指輪を記念に残されておいた方が思い出にもなりますし」
私は、店の人向かって言った。
「すみません。これは、いただけません」
やっぱりダメだ。受け取れない。
「そうか」
店を出て、銀座の通りに出る。
井上さんは、店を出ても何も言わなかった。
「腹減っただろ?何か食べるか」
井上さんは、すでに次のことに頭を切り替えているようだった。