サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~
「移動しよう」
井上さんは、交差点の手前でタクシーを止めた。
乗り込むと、すぐに行先を告げた。
彼は、タクシーに乗った後も、私が決心できなかったことについて何も言わなかった。
「オリエントホテルまで」
「オリエントホテル?井上さん、えっと、またそんなところで食事」
そんなところでというのは、オリエントホテルというのは都内屈指の5つ星ホテルなのだ。
また今日も、高級な食事?
そういう食事を何度もをいただいても、気持ちが変わるわけじゃない。
「君は、きょう一日の時間を俺にくれたんだろ?」
井上さんは、車のシートにもたれながら、静かに言う。
「はい」
そうだった。今日は彼に全部任せよう。
車は、正面玄関の前に滑り込んだ。
ドアマンが恭しくドアを開けてくれ、私たちは建物の中に入る。
このホテルは、古い建物の上に高層ビルが建てられていて、モダンで洗練された雰囲気の中に伝統のテイストのきいた、素敵なホテルだ。
外国人客の利用も多く、雰囲気も海外のホテルのよう。
「レストランでいいの?」
ロビーでフロアを確認しよう。
「いいや、これ」
井上さんが示したのは、ブライダルフェアと書かれた看板だった。
「ん?ブライダルフェア?どうしてまた?」
「女の子のあこがれだろ?」
本当に、どうしたの?こういうの真っ先に、面倒くさいって言うのに。