アクアリウムで魅せて
「ーーーおまたせしました」
彼が注いでくれたのは、
見たことのない深海ブルーが鮮やかな綺麗なカクテルで。
「「うわ、きれー……」」
ありきたりな言葉しか出てこない私達。
お洒落なカクテルを目の前に、なんだか口にするのがもったいなくためらってしまう。
「うわ、香織すっごい美味しいよこれ……」
菜月の声が遠くに聞こえる。
ーーー私は目の前の青から視線を反らせなかった。引き込まれ、深みまで沈む感覚……。
「こう言うの、好みじゃないですか」
はたと。
目の前の彼の線の細い指が、グラスの持ち手に触れている。
"さげられてしまう"
そう思った瞬間。
「いや、全然そんなんじゃないんです!」
私はブンブン首を横に振ると、グラスにそっと口付けた。
ーーー爽やかな柑橘系の味に混じる大人な苦味。喉越しがすっきりしていて飲みやすい。
「……気に入って頂けたようでよかったです」
彼はそう、私の顔を見るなり
作り物のような綺麗な顔に微かに笑みを滲ませた。