アクアリウムで魅せて
「で、香織はどうなのよ。……上手くいってんの?」

私は少ししてから、
「うーん。そうだね」と、曖昧に返事をした。

「私はさ、正直香織はその人じゃなくてもいいと思うのね」

彼女はマドラーでグラスの中を混ぜると、その手をやめて真っ直ぐな目で私を見つめてくる。
心の中を見透かされそうな気がして、私はゆっくりと彼女の視線をかわした。


「あっ、いや、別に別れろって言ってる訳じゃないのよ」

そう慌てて言葉を付けたす菜月に、「ふっ」と吹き出す。


---そう、全ては私のため。
彼女はとても優しいから。


「……私はやっぱり許せない」


彼女の声に悲しみが混じったのが分かった。


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