KANON

キオク7


カノンがいた施設裏から入った地下部屋で突然気を失った俺は、気がつくと広い部屋の中にいた。

身体が上手く動かない。

「気づきましたね」

俺に近寄った男は、カノンを連れてったあの婚約者と言った男だった。

「カノンはどこだ?」俺は、男を睨んだ。

まるで悪魔を見るように。

「カノン?何の事ですか?」
不気味な笑みで青年は答えた。

「とぼけるな!おまえが婚約者だと連れてっただろ!」
部屋に俺の声が響いた。

「あー。ボクのドールに勝手に名前つけたのか…」男は一瞬で悪魔のような顔になった。

ドール?カノンが人形?こいつ…頭いかれてる

俺は、怒りの塊だった。

男は身体が上手く効かない俺を殴り、1つの柱にもたれかかると、笑い出した。

「はぁ。可笑しい…」

「何がおかしいんだよ…」ボロボロな体で俺は言った。

「言ったでしょ?彼女のはボクのものだって。
ボクは彼女を落としちゃって…ずっと探してたんだ。」青年は自分の手を眺めながら話す

「カノンは人形じゃ…」そう声に出すと青年は俺を強く蹴飛ばした。

横たわる俺の横でしゃがみ青年は俺の胸ぐらをつかむ。
「あまり、無駄口たたくと、殺すよ」
そう言った後、俺の顔を殴った。

「彼女は…ずっと前からボクの物だった。
彼女は、生まれてすぐ親に捨てられた。
ここで、つけられたのは185。
ボクは175…そう。ボクと彼女はここでずっと過ごした。違うのは、ボクは里親に拾われ、彼女は拾われなかった。ボクは、彼女の親を調べた。すぐ見つかったよ。彼女の親をおとしたら、ペラペラ喋った。彼女の親は誰の子かわからない子が邪魔になって捨てたけど、迎えに行くと言い出した。だから、殺した。ボクの物にならなくなると困るから。でも、ボクだけになるには施設長が邪魔だった。だから、薬品の勉強して、薬で死んだ。あの人もバカだよな…俺に騙されてクスリ飲んじゃって。」嬉しそうに笑う。
俺は、確信した。こいつは、殺人鬼だと…

青年は、悪魔の笑みで話を続けた。

「やっと、ボクだけの物になったのに、彼女は逃げた。で、大きな海に落ちちゃったんだ。
でも、あんたが彼女を拾ってくれた。
それだけでよかったのに…あんたは彼女を取ろうとした。ボクの邪魔をしにきた。
許さない…ボクの邪魔をするなら、あんたには消えてもらう…」
ゆっくり俺を立たせ、俺の腹を殴り俺は倒れこんだ。

青年は俺の上に乗りナイフを振り上げ
「残念だね。彼女を取れなくて…」

俺の首にナイフが向かってくる。

俺は目を強く瞑った。

ゆっくり目を開けると、青年の手を握るスーツ姿の男が立っていた。

「常田健吾!殺人及び女性監禁容疑で逮捕する」3の刑事に青年は連行される。

「よく、耐えたな。順平から連絡受けて一部始終録音させてもらったよ」
そう。俺はここに来る前に順平の友達に刑事がこの近くにいる事を思い出し、頼んでいた。

俺は、今いる部屋の奥にもう1つドアを見つけ、開けると中でカノンがアザだらけで倒れている。急いでカノンに駆け寄り、声をかけた。

「カノン!カノン!」俺はカノンを抱きしめた

「痛いよ…」かすれた声を出した。

カノンは弱い力で目を開ける。
「つーさん…どうして…?」

「聞こえたからだよ…カノンの心の声が」
声が震えた。

カノンは俺の頬にゆっくり手を当てる
「聞こえたんだあ…よかった…」

俺は自分の頬にあるカノンの手を握った。

「一緒に帰ろう…」涙をこらえながら俺は言った。

カノンはうっすら目を開けた
「私、あの家に…帰っていいの?」

「当たり前だろ!俺とカノンの家だよ」

「怒られるよ…ソラさんに…」

「バカ…ソラだって、カノンに帰ってきてほしいって言ってるよ」鼻をすすりカノンを抱きしめ頭を撫でた。

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