KANON
キオク6
それから、1ヶ月過ぎる頃。
俺は、仕事に没頭した。
まるで、気を紛らわすかのように。
最近、仕事終わるとすぐ自宅に帰って、すぐ寝た。何も考えたくないから。
ソファーで横になって天井を見つめ、ゆっくり目を閉じた。
「つーさん…」
カノンの声が聞こえた気がした。
空耳か…とまた目を閉じた。
「つーさん…つーさん…聴こえる?」
いや、空耳じゃない。カノンの声だ。
「つーさん。私は今、心で話しかけてる。
私ね…。こうして誰かの心に話しかける事ができる。でも…これはいつでもできるわけでもなくて…もし。つーさんに私のこの声が聞こえていたら…いたら…。…けて。…すけて。…助けて…」
俺は、ハッとして目が覚めた。
カノンは苦しんでいるのかもしれない。
俺は。迷っていた。騙されてるかもしれない。
どうしていいのかわからない。
今、カノンが何処にいるのかもわからない。
どうやって探せばいいのか。
俺は、悩んだ。あれは…あの声が本当にカノンなのか。戸惑った。
次の日から1週間。俺は有給をとりカノンを探した。
カノンが育った児童施設をネットで調べ、行ってみると、そこは人気もなく。閉館し建物はボロボロだった。
建物の中に入ると窓や柱に蜘蛛の巣が張っていた。
カノンがいた頃を想像した。
1つの部屋の前に5と書いてある数字が見えた。
ホコリを手でふき取ると185と書いてあった。
ここだ。カノンがいた部屋だ。
俺はゆっくりドアを開けた。薄暗い中カーテンから太陽の光が差し込む。
部屋の中はカビさ皿が散らばっていて。
ベッドの柱にロープの切れた後。
ロープに少し血が付いていた。
1つの皿が欠けている。
カノンは皿の欠片で繋がれたロープを切ったのだろう…
俺は、施設を飛び出し。順平に電話した。
俺は、カノンが逃げたであろう先に行った。
高い崖で波が強く打ち付けていた。
カノンはここから落ちて、あの海に流れ着いた
と確信した。
俺は、カノンの全てを察した。
あいつは。ずっと1人で戦っていたんだ。
あいつは今も戦っている。
あのピエロと…
ただ違うのは、前と違って俺がいるという事。
俺が助けなきゃ。俺がカノンを助けてやらなきゃ。カノンが死ぬ…。
あのカノンの声は、最初で最後の声だったのかもしれない。と思ったら、居ても立っても居られず走った。無我夢中で走った。
何処に向かっるかはわからない。
とにかく走った。
カノンの名前を呼びながら…
カノンに俺の声が届くように…
もう一度、カノンの施設に戻った。
改めて施設の周りを見渡すと、何だか変な違和感を感じ、見落としている気がした。
施設裏にまわると、壊れたブランコが風で揺れている。
施設裏の扉が少し開いていた。
俺は、恐る恐る扉に近づき覗くと、地下に続く階段がある。
俺はゆっくり階段を降りた。
階段を降りると薄暗い中左に通路があり、進んでいく。足音が響く。
突き当たりに鉄の扉がある。
その扉のとってを握った時、背後から聞き覚えのある声がした。
「何しにきたんですか?」
その声に振り返ると、目の前にピエロの仮面を被ったスーツ姿の男が立っていた。
「おまえ…」そう声を出した瞬間ビリビリ!っと音がし気を失った。