社内恋愛発令中【完】
それなのに蒼井さんの顔は、口の片端を持ち上げて笑うその表情まではっきり見える。



「係長も部長も人のことからかってばっかり…」



蒼井さんにもたれかかった体を起こして、蒼井さんを見上げた。



恥ずかしくて涙さえ浮かんでしまう。



「その顔だよ」



蒼井さんがあたしに眼鏡を返しながら呟いた。



「え?」



聞き返すあたしに、蒼井さんは立ち上がって言う。



「原因」



何のことかと首をかしげるあたしに、蒼井さんは戻るぞと歩いて行く。



「え、あ、ちょっ…」



あたしは急いでそのあとを追った。
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