社内恋愛発令中【完】
「遅くなると帰りが危ないよ」



「…はい」



あたしは自分の荷物をまとめ、コートを羽織り帰る支度を整える。



「じゃあ、お先に失礼します」



「お疲れ様」



蒼井さんの笑顔を最後に、あたしは部屋を出た。



憎まれ口が多い蒼井さんだが、根は優しい人だ。



分かってるから、あたしは秘書になることを決めたのだろう。



外に出ると、春の夜のまだ少し肌寒い風が頬に触れた。



街の明かりに照らされた桜が幻想的。



しばらく歩くと、前方に知った人影が見えた。



(蓮也さんだ…!)
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