社内恋愛発令中【完】
「いえ、こちらでは対処しかねます」



どうやらクレームの電話らしく、蒼井さんは困ったような顔をした。



「こちら側の問題ではなくてですね…」



漏れる声を聞くと、相手は随分若い声だ。



しかも言ってることが無茶苦茶ときた。



「いえですから…」



蒼井さんの声が心なしか低くなってる気がする。



蒼井さんも人間だ、イライラくらいするだろう。



そう思っても、蒼井さんの顔はどんどん怖くなっていく一方で。



「何度も申してるつもりですが、まだご説明が足りないですか?」



今日聞いた声が別人かと思うほど、蒼井さんの声は低くなっていた。



言葉は丁寧なのに、その丁寧さが低い声に消されてしまう。
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