社内恋愛発令中【完】
「っ」



勝手なことを言われているのに、自分の胸が鳴ってしまうのが不思議だった。



どこか嬉しくなる自分がいるのも不思議だった。



そんな感情に戸惑って、夢中でパンにかじりつく。



「ゆっくり食べないと、また腹壊すよ」



「大丈夫でふ!」



喋りながら食べるあたしを、蒼井さんがなだめる。



あたしは忘れていた。



こうして蒼井さんと関係を深めていくことで、あたしを恨む人の気持ちが強くなること。



あたしは知らなかった。



扉の外にいたのは、蓮也さんではなかったということ____
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